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キャッシュフロー計算書と株式投資

キャッシュフロー計算書とは、Cash Flow Statementを略して「C/F」とも表記される財務諸表の一つで、近年注目されている新しい財務諸表です。 損益計算書では、あくまでも帳簿上の利益を見ることができますが、実際に今会社にある現金(または同等物)がどの程度あるかを把握することができません。そこで、キャッシュフロー計算書では、資金がどのように移動しているのかを分析できる財務諸表の一つで、主に企業の資金繰りなどを把握する際に活用されます。

 

資金繰りというと一般の家計ではなじみはないかもしれません。しかしながら、企業の場合「黒字倒産」という言葉がある通り資金繰りは生命線といえます。キャッシュフロー計算書はこうした資金繰りの状況や、その余裕度、お金の出入りの健全性などをチェックできる財務諸表です。

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キャッシュフロー計算書と損益計算書との違い

キャッシュフロー計算書は「お金の流れ」を見るための計算書です。
企業の利益を示す計算書である「損益計算書」と似ていますが、損益計算書は利益は発生主義で見ています。たとえば、100万円の受注を引き受けたとします(100万円の売り上げを計上)。そしてその月に50万円の原材料の支払いがあったとします。

この会社は100万円の売り上げに対して50万円の原材料代金の支払いがあったわけですから差し引き50万円の利益が出たことになります。これが損益計算書の場合の処理です。

ところが、この会社は50万円の原材料代金の支払いができず倒産してしまいました。利益は出ているのに倒産したわけです。なぜでしょうか?

巷ではこうしたケースを「黒字倒産」といいます。利益が出ているのに倒産するわけです。それはキャッシュフローの流れを見ればわかります。上記のケースでは100万円の仕事を受注して売上として計上したのはいいわけですが、実際の売上金の入金は2カ月後だったのです。

ですから、会社の中に現金が不足してしまって原材料代金を支払えずに倒産というわけです。

従来の財務諸表である損益計算書だけではこうしたことを読み取ることができないのです。そこで登場したのがキャッシュフロー計算書です。キャッシュフロー計算書はキャッシュ(現金)の流れを見るための計算書です。


キャッシュフロー計算書のしくみ

キャッシュフロー計算書とは、企業におけるキャッシュフロー(現金の流れ)を示す財務諸表のことを指します。黒字倒産という言葉があるように、いくら帳簿上黒字の成果を会社が挙げていたとしても、支払いを行うための現金が不足していれば倒産してしまします。
キャッシュフロー計算書では、企業のキャッシュフローを明確にして、将来にわたる現金創出力や負債等の支払いに充当できるキャッシュを生み出すことができるのかを知るための計算書です。キャッシュフロー計算書には大きく「営業活動」「投資活動」「財務活動」の三つの観点から計算書が作成されます。

営業活動のキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローは要するに事業活動(本業)におけるキャッシュフローを示します。例えば小売店の場合、商品を仕入れて販売するという流れにおけるキャッシュ(現金)の流れを示す計算書となります。
仕入れはキャッシュのマイナス。販売(売上)はキャッシュがプラスになりますね。営業キャッシュフローは黒字が普通です。ここが赤字だと会社としては本業でマネーを稼ぎ出せていないわけで、抜本的な対策が必要であるということを意味しています。

 

投資活動のキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローとは、定期預金や有価証券等への投資などによるキャッシュの変動を示す計算書となります。機械などの固定資産の購入も投資活動のキャッシュフローに入ります。例えば、定期預金に預け入れを行ったり、有価証券に投資すればキャッシュフローはマイナスとなり、逆に預金の解約や有価証券売却はキャッシュフローはプラスとなります。
投資活動のキャッシュフローは成長企業であればマイナスになるのが一般的です。事業拡大のためには投資が欠かせないからです。一方で投資キャッシュフローがマイナスの会社は資産の切り売りやダウンサイジング(リストラ)を実施していると考えることができます。

 

財務活動のキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローとは、手形や借入金の返済、配当金の支払いなどによるキャッシュの増減を示す計算書となります。借入を行えばキャッシュは増加し、逆に返済することでキャッシュは減少します。
資金繰りや投資のためにお金を借りる(融資を受ける)ことで財務キャッシュフローはプラス、逆に負債を返済したり、株主への配当金などの形で外部に放出することで財務キャッシュフローはマイナスとなります。

 

キャッシュフロー計算書の見方

キャッシュフローの見方についてですが、ぞれぞれの分類により見方は異なります。まず、最も重要になるのは営業活動によるキャッシュフローです。営業活動とは本業ですから、本業のキャッシュフローがマイナスという場合は、その会社は売上に対する資金回収が上手くいっていないということを意味しています。つまり、営業活動によるキャッシュフローがマイナスであれば、その分を銀行からの借入などでキャッシュを調達しなければ現金不足に陥るということを意味します。単年度ならともかく、複数年度にわたり営業活動のキャッシュフローがマイナスという場合は要注意です。

次に、投資活動によるキャッシュフローですが、優良企業の場合さらに業績をアップさせるために設備投資を行います。また資金が余っているような会社は少しでも現金を活用するために定期預金への預けれや投資などを行うことも考えられますので、投資活動によるキャッシュフローはマイナスの方が良いといえます。逆にプラスとなっている場合は会社の保有資産を売却しているということになります。

最後に、財務活動によるキャッシュフローですが、こちらもマイナスの場合や借金の返済などが進んでいるということを意味します。逆に財務活動のキャッシュフローがプラスの場合は新たな借入などを行って資金調達を行っているということを意味します。

 

キャッシュフローを見る際の注意点

なお、キャッシュフロー計算書の見方の項目では、それぞれの項目についてプラスが良いのかマイナスが良いのかを記述しましたが、かならずしもそれが正しいというわけではありません。例えば、財務活動がプラスというのは借金の増加という点も指摘されますが、これが業務拡大のための大規模な設備投資の為であれば、問題は無いかもしれません。逆に、投資活動のキャッシュフローがプラスでもそれが、不要となった設備等の売却などによるものなら悪ではないかもしれません。

ただし、営業活動のキャッシュフローについては単年度はともかく、複数年度である場合は危険であると判断できます。要するに事業がカネを生んでいないという状態ですので、本業以外の手段で現金を確保しなければ会社として存続できないということを意味してしまいます。

 

キャッシュフローのパターン別会社の状況

ここでは、キャッシュフロー計算書における「営業」「投資」「財務」におけるキャッシュフローの状態別に会社がどのような状態にあるのかを簡単に説明していきます。

営業プラス・投資マイナス・財務マイナス (優良企業に多いパターン)
営業プラス・投資マイナス・財務プラス (成熟した成長企業に多いパターン)
営業プラス・投資プラス・財務マイナス (ディフェンシブな成熟企業、高配当銘柄に多い)
営業マイナス・投資マイナス・財務プラス (本業が斜陽化、低迷化しているパターン)
営業マイナス・投資プラス・財務マイナス (スタートアップ、研究開発型企業、ベンチャー)
営業マイナス・投資プラス・財務プラス (リストラ再建中に見られるパターン)

 

キャッシュフロー計算書を読みこなせるためのお勧め良書

下記はキャッシュフロー計算書を読みこなす上で役に立つおすすめの本です。より深く勉強されたい方はぜひご一読ください。

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法

財務3表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)についての勘所を分かりやすく紹介している本。簿記に関する知識がさほどなくても理解しやすいので、財務諸表の要点だけを知りたいという方に特にお勧めです。

 

財務諸表の種類と特徴

それぞれの財務諸表ごとの特徴をまとめています。財務諸表全体としての見方、活用法については「株式投資に役立つ財務諸表の種類と読み方」もご参照ください。

財務諸表の名前 それぞれの財務諸表で何がわかるの?
貸借対照表
(バランスシート)

会社の財産状況がわかる財務諸表。
会社が保有する資産と、その資産の資金元が分かる書類となります。資産、負債、資本がどのような状況になっているのかがわかります。

会社の財政状況を把握する上で重要な財務諸表です。

損益計算書
(P/L)

会社における収支表です。
会社が一定期間にあげた売上から原価を引き、人件費などの費用を引き・・・といった具合にしてどのくらい利益をあげたのかを詳しく見ていくことができます。

会社の収益力を把握する上で重要な財務諸表です。

キャッシュフロー計算書
(C/F)

比較的新しい財務諸表です。
会社における「現金(キャッシュ)」の動きがどのようになっているのかを示しており、営業上の現金収支、投資上の現金収支、財務上の現金収支を見ることができます。

損益計算書では分からない会社の資金繰り状況を把握する上で重要な財務諸表となります、